虫に鳥にも

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ターナー展に行ってきた

 

(1)空間の広がり

 ターナーって誰だっけと思いつつ、会社に招待券があったので行ってきました。地味といえば地味ですが、美しい風景画です。私はとくに「ソマーヒルトンブリッジ」という作品にうっとりしました。

   *参考:https://intojapanwaraku.com/art/20180327/33115

 俯瞰ではない、ほぼ正面の視点から、奥へと視点を誘導して空間を感じさせる物の配置。これがターナーの特徴の一つではないかと思います。壁に飾れば、そこに窓があって、向こう側に豊かな世界が続いているかのようです。物の存在というよりは、奥へと広がる空気感に、静かな迫力を感じます。

(2)ターナーの時代

  ウィリアム・ターナー(Joseph Mallord William Turner:1775-1851)はイギリスを代表する風景画家です。もともとは写実的な画風ですが、時を経るにつれ、光にあふれ、もやでぼんやりしたような作品になっていきます。この頃のイギリスといえば、ちょうど産業革命の時代。本当に曇っていたのかも(笑) 海には帆船も蒸気船も浮かんでいました。

 当時の風景画は、いまでいう写真のように、うつくしい名所を人々に見せて楽しませる役目を担っていました。ターナーもイギリスにとどまらず、ヨーロッパ中を旅行して、各地の風景をとても印象的に、時には強調して、表現しています。

(3)版  画

 さて、この展覧会の見どころの一つは「版画」であるということができます。ターナーの絵画75点に加え、ターナーの版画作品112点が出品されており、なかでも『イングランドウェールズのピクチャレスクな景観』に収録された版画作品は、見ごたえがあります。これは、いまでいうところの「一度は見たい世界の絶景写真集」のように思われます。

 この版画作品では、彫刻師の繊細な技術に圧倒されます。ターナー自身も腕のよい彫刻師に細かい注文をしたといわれています。ターナーは、版画を絵画の模倣としてではなく、一つの芸術作品として理解していたのではないでしょうか。展覧会では、版画と、そのもとになったターナーの絵画作品を並べて比較することもできますが、この二つは同じ作品でありながら、違う作品としての魅力も持っています。絵画が窓の外の風景ならば、版画はある劇的な瞬間をとらえて時間を止めた一場面のようです。

 

turner2018.com