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ブリューゲル「バベルの塔」展に行ってきた

ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展公式ガイドブック (AERAムック)

 

 興奮するほど素晴らしかった…。

 

 現存するブリューゲルのバベルのうちの一つが来日しています。私は大阪の国立国際美術館で鑑賞してきました。上の画像からもみてのとおりのスケール感と、重厚な色合い。しかし、今回は、実物を目の当たりにできる幸運はもちろん、展示の構成も素晴らしい企画でした。順番にみていくだけで、バベルの塔に至る時代背景や影響を知ることができます。 

 

 ■時代背景

 ブリューゲルは16世紀のネーデルラント(オランダ)の画家です。当時の西洋絵画は宗教画として発展してきました。宗教画には、そこに描かれた人物や場面、テーマを示す「モチーフ」が描かれます。今回の展示作品でいうと、聖カタリナを象徴するものとして「剣」が描かれています。これは、彼女が斬首刑に処され、殉教したからです。ほかにもよく出てくるものとして「棕櫚(しゅろ)」は殉教者を、ふくろうは英知をあらわします。こうしたものは持物(じぶつ:アトリビュート attribute)とも呼ばれますが、これらによって描かれている人物を特定することができるのです。

 

■ヒエロムニス・ボス

 今回の美術展では、ブリューゲルのほかにもう一人、主役がいます。それがヒエロムニス・ボスです。彼は、15世紀後半から16世紀初頭のネーデルラントの画家であり、つまり、ブリューゲルよりちょっと前の人です。ボスの作風は、ブリューゲルを含め、16世紀のネーデルラントの画家に大きな影響を与えました。

  彼の作品は、聖書などをもとにした宗教画でありながら、妖怪のような奇想天外な生きものが跋扈する世界を描いた、強烈なものです。その世界観は当時の人々を魅了し、16世紀中頃には、ボスの画風を模倣した版画や絵画が人気を博しました。ボス自身の作品は25点しか残っていないのですが、これらの模倣された作品から、ボスが描いたモンスターたちを知ることができます。

 見どころ|【公式】 ブリューゲル「バベルの塔」展

 美術展の公式ホームページでは、かなり力を入れてボスや「バベルの塔」の見どころが説明されています。これを見るだけでも足を運んだ気分になれるかも。

 

ブリューゲルとボス

  ブリューゲルもまた、ボスの模倣作品を描いています。今回の展示会では、その代表作品である「大きな魚は小さな魚を食う」を見ることができます。弱肉強食的な意味をもつことわざで、そのフレーズのとおり、大きな魚が小さな魚を食べている絵です(下記リンク画像参照)。

 この絵の中に、ボスのモチーフとして、足の生えた魚や空を飛ぶ魚が描かれています。手前の舟では、父親が息子に「あれをごらん」と魚を指さし、世の摂理を教えているようです。左上の小屋の手前に入る足の生えた魚は、今回の展示会の公式キャラ「タラ夫」になっています*1

www.asahi.com

 

 

バベルの塔、雄大かつ詳細

 そして、展示会の最後にあらわれる本命、「バベルの塔」。実物をみて感じたのは、ポスターやポストカードの色の再現度が極めて高いということです。バベルの塔はよく、ジグソーパズルなどのいろんな商品にあしらわれていますが、同じ絵であっても赤や青の色合いが結構、違います。

 「バベルの塔」の赤色は、私はてっきり夕焼けか何か、あるいは、壊れる運命にあることを示唆するものだと思っていたのですが、あれは赤レンガのようです。塔の左端に赤いラインが縦に入っているのがわかると思います。あれは、赤レンガを下から上へ運ぶときに付いた色なのです。

 この一端からも分かるように、ブリューゲルは、人が巨大な塔を建てる姿を生き生きと想像しています。決して神話や聖書の話ではなく、非常にリアルな「建築」です。これは小さい画像ではよく分からないのですが、その他にも、物を上に運ぶための滑車や、馬、資材を運ぶ人びとなどが塔の通路に描かれています。右側の船も建築資材や食料を運んできているのでしょう。巨大な塔ですから、人々が塔の中で生活を営みながら築き上げているのです。

 こうした今にも動き出しそうな人々の姿は、農民画家として知られるブリューゲルの印象に通じるものがあります。彼の観察眼が、このスケールを生み出したのでしょう。

 

 ちなみに、「今にも動き出しそうな」と書きましたが、この展示会の最後にはある映像の紹介があって、そこでは「バベルの塔」が3D技術で再現され、なんと本当に動きます。これが非常に夢があって、いずれVRで「ブリューゲルバベルの塔ツアー」をしてほしいと期待するくらいでした。ブリューゲルバベルの塔の中身までは描いていませんが、今回の展示会では、大友克洋氏が描いた内部構造の様子「INSIDE BABEL」*2も展示されていたので、できないことはないはず(笑)