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虫に鳥にも

読んだもの、見聞きしたものの記録に。

河野稠果『人口学への招待』 その1 基本のデータ

 

 

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)

 

▶河野稠果(こうの・しげみ)

 1930(昭和5)年広島県生まれ。58年米国ブラウン大学大学院社会学研究科博士課程修了(Ph.D.社会学)。同年厚生省人口問題研究所入所。61~63年インド・ボンベイ国連人口研修・研究センター教授として出向。67年国連本部人口部専門官へ転任。73~78年同人口推計課長。78年厚生省人口問題研究所へ人口情報部長として転任。82年同研究所人口政策部長。86年同研究所所長。93年同所長退任、麗澤大学国際経済学部教授。2006年同大学名誉教授。

 

 私が大学生の頃、ゼミで最初に扱ったのが本書でした。ちょうど日本の人口が減少へ転じるかどうかという時期だったと思います。数字の話なので混乱することもありますが、面白い本です。数を扱うことの難しさと奥深さを教えてくれます。 

 学校で社会というものを学び始めた中学生のとき、日本はすでに出生率の低下や少子高齢化が問題にされていました。人口ピラミッド労働人口合計特殊出生率、M字型カーブ……。思えば人口学は実に身近な所にあります。私たちはこうした指標やグラフを義務教育中に学んできました。

 今、並べてみた指標やグラフを思い浮かべるとき、おのずと女性の雇用問題や社会福祉問題が連想されてきます。現代の私たちを悩ます社会問題は、むろん社会制度の問題でもありますが、人口の構造に大きな影響を受けています。

  本書の発行は2007年8月。およそ8年半が経ちますので、最新のデータを調べつつ、人口学の基礎と人口問題について見ていこうと思います。

 

(1)基  礎

 

▶人口変動の三要素

 人口とは出生、死亡、転入、転出という四つの独立的な要因の総合効果によって増加し、減少する(17頁)

 転入と転出を「移動」で括り、出生、死亡とあわせて「人口変動の三要素」と呼ばれます。子どもがたくさん生まれても、それ以上に人が死ねば人口は減るし、逆に子どもがあまり生まれてこなくても、出生数より死亡数が少なければ人口は増加します。また、仮に日本が移民を受け入れるようになれば、移動による人口の動きも大きくなります。

 出生、死亡、移動のデータによって人口推計が算出されます。実際に総務省統計局では、国内の総人口および日本人人口の推計が算出されていますが、その基本式*1は以下のようなものです。

■総人口=基準人口*2(総数)+自然動態(日本人・外国人)+社会動態(日本人・外国人)

■日本人人口=基準人口(日本人)+自然動態(日本人)+社会動態(日本人)+国籍の異動による純増

 *自然動態=出生児数-死亡者数

 *社会動態=入国者数-出国者数

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 最新版のグラフ*3を見ると、2010(平成22)年あたりから減少に転じているのが分かります。しかも、平成22年以前の5年間の増加より、過去5年間の減少のほうが、傾斜が急になっています。

 ちなみに、政府統計資料*4で細かい数字を見ることができますが、2010年の前後で見比べると、出生児数の減少、死亡者数の増加、どちらも総人口の減少に影響を与えているのが分かります。

 

人口ピラミッド

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 おなじみの人口ピラミッド、これは2015年の形状です*5。もうピラミッドではありませんが……。2060年には立派な逆ピラミッドになる予想です。

 この図では、男女・年齢別人口を視覚的に理解することができます。49歳の所がへっこんでいるのは、1966(昭和39)生まれの人ですから、丙午*6の影響です。67歳前後、43歳前後のでっぱりはベビーブームによるものです。

 人口問題研究所のトップページ(http://www.ipss.go.jp/index.asp)では、1920~2060年のピラミッドが動きながら変化しているのを見ることができます。ピラミッドの形状変化もさることながら、この「ひっこみ」や「でっぱり」が上に移動しつつ、徐々に埋もれていくのが分かります。これだけダイナミックに人口構造が変わっていくのなら、社会システムが変化を求められるのも当然だと思えます。

 

▶男女・年齢別労働力率

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 ちょうどいいグラフがなかったので、人口問題研究所の「人口統計資料集(2015)」*7からデータをお借りして作成しました(お粗末ですみませんが)。女性のM字カーブの推移を表したグラフはネット上にあったのですが、男女で並べて比較したかったので。

 男女の差が広く、女性が20~30代に結婚、出産、子育ての影響を受けているのが分かります。1960年と2010年のグラフを比べて見ると、女性のM字カーブがゆるくなり、労働力率も上昇している一方、男性の労働力率はやや下がっているようです。まあ、考えてみれば、新しい雇用が創出されない限り、椅子の取り合いになってしまいますね……。

 

 

⇒その2に続きます。

 

*1:参考:総務省統計局「人口推計について」http://www.stat.go.jp/data/jinsui/1.htm#sakusei

*2:現行の人口推計は,平成22年国勢調査による人口を「基準人口」としています。

*3:参考:総務省統計局「総人口の推移」http://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.htm

*4:「(参考表)全国人口の推移」http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001145062

*5:国立社会保障・人口問題研究所「人口ピラミッドデータ」http://www.ipss.go.jp/site-ad/TopPageData/pyra.html

*6:丙午の年に生まれた女性は夫を食い殺すという迷信があった。

*7:http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2015.asp?fname=T08-03.htm