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虫に鳥にも

読んだもの、見聞きしたものの記録に。

釘原直樹『スケープゴーティング』 その3 メカニズム

 

(3)スケープゴーティングのメカニズム

 

▶動 機

 ①罪悪感の抑圧・投影精神分析理論)

 ②欲求不満の解消(欲求不満攻撃理論)

 どちらも自分のマイナスの感情を別の誰かに投影して攻撃することで自分を保とうとするメカニズムです。この2つの違いは、そのマイナス部分が自分に存在することを認めているかどうかにあります。

 

 精神分析理論は……個人が所有している是認し難い衝動が他者に投影され、その結果、自分にはそのような衝動がないと思ってしまうメカニズムである。……一方、欲求不満攻撃理論では……当人が意識している感情を裏返した形(例えば、「私はあなたが憎い、だからあなたは私を嫌っているはずだ」)で投影するものである。(16頁)

 

 あ、いるいる、こういう人……。相手を攻撃すると、それがそのまま自分のコンプレックスだとバレてしまうんですよね……。

 

▶促進要因

  1. スケープゴーティングの有効性と同調:スケープゴーティングすることによって個人・集団の自尊心や安寧が保たれたり、高揚感に包まれたりするという「有効性」、いじめやジェノサイドのように、他者のスケープゴーティング行動をみて影響を受けるという「同調」
  2. スケープゴーティングの対象:異端者・異質者、攻撃しても安全な対象
  3. スケープゴーティングをする側のパーソナリティ:権威主義的性格、社会的ヒエラルキーの維持にこだわる

 

 このあたりは、ユダヤ人の境遇など、歴史的な出来事を思い浮かべるとわかりやすい気がします。

 

▶マスメディア

 要因を活性化・触発させるものとして、マスメディアのが視聴者の興味をひくために偏ったニュースをとりあげることが「スケープゴーティングを生み出す土壌になっている可能性がある」と指摘しています。

 また、災害や事故が発生した場合に悪者探しをし、さらにその対象が時間経過とともに変遷していく(個人→職場の同僚→職場のシステム→管理者→行政当局→社会→国家)報道傾向にも言及しています。

 

 

 

(4)スティグマ

 

スティグマ化とは

 スケープゴーティングのプロセスは、「ある特定の人や物に負のラベルや目印をつけること」であるといえます。このラベルをつける現象は「スティグマ化」とよばれます。

 スティグマ(stigma:烙印)はもともとは奴隷や犯罪者の目印として押された焼印のことです。社会学では以下のような意味の言葉として扱われます。

 

対人的状況において、正常からは逸脱した(望ましくない、汚らわしいなど)とみなされ、他人の蔑視と不信を買うような欠点・短所。ハンディキャップ(たとえば、皮膚の色、盲目や聾唖などの身体障害)などの属性で、差別と偏見の理由として人びとのあいだで正当化される。(『社会学小事典』有斐閣より)

 

 しかし、スティグマは人だけではなく、場所や技術、製品にもつきます。スティグマがついたものに対して、人はそれを回避する(近づかない、使わない、買わない)という反応を示し、しかもその負の認識が固定したまま記憶されてしまいます。

 

スティグマ化の解消

  スティグマ化に記憶が関与しているとすると、スティグマを解消しようとする試みはしばしば逆効果になる。つまり、反論をするたびにその用語が繰り返されるわけだから、人々はそれを繰り返し思い出すことになるのである。結果として、皮肉なことにスティグマが強化されることがしばしば起こる。(79頁)

 

 この記述は、スケープゴーティングだけでなく、さまざまな人権問題の困難さをも示唆しているように思います。

 私も小・中学生の頃に人権教育を受けましたが、はたしてあれが効果的なのか、それとも逆効果なのかは、判断に苦しむところです。自らの良心を認識する反面、差別の基準を与えられることにもなります。

 

 

 

 ⇒その4に続きます。