虫に鳥にも

読んだもの、見聞きしたものの記録に。

ピーター・ラビット展に行ってきた

グランフロント大阪で開催中のピーター・ラビット展に行ってきました。思ったよりも展示数が多くて充実しています。グッズも豊富でピーターに貢いでしまった…。開催情報は公式HPへ(ビアトリクス・ポター™生誕150周年 ピーターラビット™展)。このHPを見るだ…

デイミアン・チャゼル監督『ラ・ラ・ランド』(2016)感想

▼主演男優 ライアン・コズリングといえば、私の中では『ドライブ』(2011年)だ。すごくカッコイイって雑誌に書いてあったので、DVDを借りて観たことがある。率直にいって面白くはなかったけれど、やけに強烈な印象に残る作品で、ライアン・コズリング演じる…

「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」#1 感想

やっぱり自分の仕事にも通ずるところのあるドラマなので観てみました。私の仕事のやり方は担当している編集者に合わせたものなので、他の出版社ではどういうふうにしているのか、気になるんですよね。まあ、ドラマなので、ドラマだなって感じでしたが。 なん…

マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督『レッドタートル ある島の物語』(2016)感想

秋だからでしょうか。無性に映画が観たくなる季節です。表題の監督名に誤字がないか心配です。芸術の秋に寄り添う一作でした。 映像は、セル画のような質感と、CGの動きが合わさった表現で、絵本がカサカサ動いている感じです。日本昔話的というか、春休みの…

山田尚子監督『聲の形』(2016)感想

前回観たのが『君の名は。』だったせいか、最初は絵に少しだけ違和感(枚数とか、動きとか、画面がキラキラしてない感じ)がありましたが、しばらくすれば気にならなくなりました。時期が時期だけに比較してしまいますが、ストーリーの起伏とか、完成度とし…

井田良・太田達也編『いま死刑制度を考える』 その3 死刑適用基準

(5)日本の死刑適用基準――第4章:原田國男 ■永山事件基準 本章では、日本において死刑適用基準となっている「永山事件基準」について説明がなされています。永山事件基準とは、1968(昭和43)年に、当時19歳であった永山則夫が2名のタクシー運転手と2名の…

新海誠監督『君の名は。』(2016)感想

観てから少し間が空いたので、感想というほどの感想も、あまり残ってはいないのですが。 新海監督の作品はそこそこ拝見しているのに、映像の美しさは印象に残っても、ストーリーは実はそんなに頭に残りません。その中では、『君の名は。』という作品は、エン…

井田良・太田達也編『いま死刑制度を考える』 その2 修復と応報

(3)修復的正義――第2章:高橋則夫 第2章は、被害者(遺族)の応報感情と刑事司法についての論稿です。*1 まずは、前提として、①被害者遺族が死刑を望むのは当然の感情であること、②法は応報感情のみで行使されるわけではないこと、この2点を押さえたう…

校正技能検定上級について

校正技能検定の上級をいずれ受けることがあるだろうと思って、問題集を取り寄せてみました。ひととおり解いてみましが、分量が増えたこと以外は、そんなに中級との差を感じない気がします。ぱ~っとしてみて7~8割程度の正解率。合格基準はどのぐらいなの…

井田良・太田達也編『いま死刑制度を考える』 その1 「制度」を「考える」

△井田良・太田達也編『いま死刑制度を考える』(慶應義塾大学出版会、2014年)*1 (1)はじめに 私が卒論を書くときに、この本があればな……と思いました。死刑に関する本って、たいていは存置論か、廃止論か、どちらかの立場で書かれます。それは良いとして…

飯田高『法と社会科学をつなぐ』 その3 「社会」と「世間」

(4)「社会」と「世間」 今回はちょっとタイムリーなテーマかもしれません。 ■社会的な苦痛 世の中には人間嫌いという人がいます。私ももう少し若い頃には、自分は人間嫌いなのだと思っていましたが、正確にいうと、社会的なやりとりが嫌いなのだと思いま…

飯田高『法と社会科学をつなぐ』 その2 「われわれ」意識

(3)「われわれ」意識 ■社会的動物 前回、人間は社会的な動物である、という表現を使いました。有名な言い回しですね。 社会的動物 social animal, political animal アリストテレスが社会的=ポリス的存在として人間を規定したことば。この種の規定として…

飯田高『法と社会科学をつなぐ』 その1 カスケード現象

▲飯田高『法と社会科学をつなぐ』(有斐閣、2016年) (1)目次構成 ここで取り上げられている社会科学とは、経済学、心理学、社会学の領域です。目次構成は以下のようになっています。 第1章 個人の意思決定 インセンティブ/意図せざる結果/限界効果/…

4時間の講座と、2日分のお給料

はてなブログで別アカウントをつくって、新聞のコラムや社説で気になったものを取り上げるっていうのをしていたら*1、こっちのブログはすっかりご無沙汰になってしまいました。だって全然、本なんか読んでないもん……。そもそも仕事で読むから……。 でも、それ…

河野稠果『人口学への招待』 その3 結婚

(4)少子化と結婚 ▶年齢別有配偶率 ……日本では結婚の代わりとなる同棲、パートナーシップ、そして婚外出産は非常に稀であり、出産はほとんど結婚を通じて生ずる。…… 日本では、これまで少子化の流れにもかかわらず、期間別からみた有配偶出生率が比較的安…

河野稠果『人口学への招待』 その2 高齢化と少子化

(2)年齢構造と高齢化 ▶年齢構造 人口学では人口構造の年齢について、大きく三つの部分に分けて考える。第一は15歳未満の「年少人口」、第二は15歳から64歳までの「生産年齢人口」、そして第三は65歳以上の「老年人口」(あるいは「老齢人口」)と呼ばれる…

河野稠果『人口学への招待』 その1 基本のデータ

▶河野稠果(こうの・しげみ) 1930(昭和5)年広島県生まれ。58年米国ブラウン大学大学院社会学研究科博士課程修了(Ph.D.社会学)。同年厚生省人口問題研究所入所。61~63年インド・ボンベイ国連人口研修・研究センター教授として出向。67年国連本部人口部…

シェイクスピア作・木下順二訳『マクベス』 フェアとファウル

△シェイクスピア作/木下順二訳『マクベス』(岩波書店、1997年) 11世紀スコットランドの勇敢な武将マクベスは、魔女の暗示にかかり王ダンカンを殺し、悪夢の世界へ引きずり込まれてゆく。シェイクスピア(1564‐1616)は、1600年に36歳で『ハムレット』書い…

加賀乙彦『死刑囚の記録』 その3 濃縮された時間

kinglog.hateblo.jp △前回の記事の続きです。ちょっと長くなってしまいました。 本書は7章構成、「あとがき」を含め全233頁の新書です。その多くが事例紹介であり、東京拘置所で出会ったゼロ番囚たちについて、その妄想や、陽気な性格、冤罪、宗教などに着目…

加賀乙彦『死刑囚の記録』 その2 一斉調査

(2)死刑確定者 著者は数多くのゼロ番囚に会ううちに、殺人犯にはいろいろな性格がいることに気づき、なかでも陽気でおしゃべりな人たちに関心をもちます。 その陽気な人間が、実は不安を隠し持っている。とくに印象的な人物として、松川勝美という死刑確…

加賀乙彦『死刑囚の記録』 その1 妄想の培養器

▶加賀乙彦『死刑囚の記録』(中公新書、1980年) 高校生の頃、市民図書館の閉架から加賀乙彦『帰らざる夏』(1973年)を掘り起こし、一晩中、どきどきしながら読みふけったのを思い出します。 著者である加賀乙彦氏は、陸軍幼年学校に進学するも、在学中に終…

鈴木哲也・高瀬桃子『学術書を書く』 その3 「二回り外、三回り外」

(3)読 者 本書では、想定として、「二回り外、三回り外の読者」という言葉が使われます。 「二回り外」「三回り外」の表現は……入門書の場合は、「知的関心は高いが、学問的なトレーニングは受けていない人々、具体的には大学1~2年生が読めるように」とい…

鈴木哲也・高瀬桃子『学術書を書く』 その2 学術書の役割

(2)役 割 ▶研究者として評価されるためには、Publishの営みを続けなければならない。しかし、学術書が評価を得るための媒体にとどまるとすれば、それは「真に意味のある出版」ということはできません。 著者は、いまの時代における学術書の役割について、…

鈴木哲也・高瀬桃子『学術書を書く』 その1 出版しても救われない時代

学術書を書く 作者: 鈴木哲也,高瀬桃子 出版社/メーカー: 京都大学学術出版会 発売日: 2015/09/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (9件) を見る ▶可読性を上げるためにどのような記述を心がけるべきか。書き出し、見出し、コラム、註、索引の留意点…

釘原直樹『スケープゴーティング』 その4 分析と対処

(5)新聞記事の分析 本書の前半は心理学的見地からの検討が中心でしたが、後半では新聞記事などのテキストデータを用いて、社会学的にアプローチしています。 ▶事故歩道と感染症報道 現実のスケープゴーティング現象として、 事故報道(JR福知山線脱線事故…

釘原直樹『スケープゴーティング』 その3 メカニズム

(3)スケープゴーティングのメカニズム ▶動 機 ①罪悪感の抑圧・投影(精神分析理論) ②欲求不満の解消(欲求不満攻撃理論) どちらも自分のマイナスの感情を別の誰かに投影して攻撃することで自分を保とうとするメカニズムです。この2つの違いは、そのマ…

釘原直樹『スケープゴーティング』 その2 いけにえはヤギかヒツジか問題

(2)いけにえの……ヤギ? ▶ところで、話は大きく脱線しますが、ちょっとここで確認しておきたい点があります。じつは私、この本のタイトルと表紙のヤギをみて、困惑してしまったのです。 スケープゴート(scapegoat)というくらいだから、いけにえは当然な…

釘原直樹編『スケープゴーティング』 その1 定義

今回の本の感想はこちら、釘原直樹編『スケープゴーティング:誰が、なぜ「やり玉」に挙げられるのか』(有斐閣、2014年)です。 表紙のかわいさに惹かれて手に取りました。 いけにえのヤギでございます。めぇめぇ。 (1)定 義 ▶導入部はもちろん「スケー…

斎藤茂吉『万葉秀歌 下巻』(岩波書店):老若男女、恋の歌(2)

▶引き続き恋の歌を選んでいきます。 ◆君が行く道の長路を繰り畳ね焼き亡ぼさむ天の火もがも 狭野茅上娘子 (きみがゆく みちのながてを くりたたね やきほろぼさむ あめのひもがも) あなたが、越前の方においでになる遠い路をば、手繰りよせてそれを畳んで…

斎藤茂吉『万葉秀歌 下巻』(岩波書店):老若男女、恋の歌(1)

▶上巻では、感情と自然とがとけあったおおらかな言葉の響きに魅了されましたが、下巻では恋の歌が印象的でした。ここでも幾つか、心に残ったものを書きとどめておきます。 ◆垂乳根の母に障らばいたづらに汝も吾も事成るべしや 作者不詳 (たらちねの ははに…

斎藤茂吉『万葉秀歌 上巻』(岩波書店):自然、感情、言葉の一体感(2)

▶引き続き、私の好きな歌について書いていきます。 ◆世間を憂しと恥しと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば 山上憶良 (よのなかを うしとやさしと おもえども とびたちかねつ とりにしあらねば) この反歌一首の意は、こう吾々は貧乏で世間が辛いの恥か…

斎藤茂吉『万葉秀歌 上巻』(岩波書店):自然、感情、言葉の一体感(1)

▶本書は、歌人である斎藤茂吉が、万葉集に収められた歌のうち、長歌をはぶいた4200足らずの短歌のなかからおよそ400首の秀歌を選んで、評釈を加えたものです。 まずは鑑賞の心構えとして、「序」に記された著者の以下の言葉を紹介します。 ……選んだ歌に簡単…