虫に鳥にも

読んだもの、見聞きしたものの記録に。

ベーシックインカムの社会実験

 今朝、出勤しながらスマホを眺めていたら、目に飛び込んできたこの記事。

 

www.businessinsider.jp

 

 Y Combinator というアメリカの会社が、3000人を対象にベーシックインカムの実験を行う予定であるとの内容です。

同社は3000人の参加者を2つの州から集め、彼らを2つのグループに分ける。最初のグループの1000人は、最大5年にわたって、月1000ドル(約11万円)を受け取る。2つめのグループの2000人、実験では「コントロール・グループ」と呼ぶ2000人は、月に50ドルを受け取る。

 日本では、行政でも民間でも、こんな実験はできそうもありません。もし、するとなったら応募しますけどね! 11万×12ヶ月×5年=660万円。奨学金が返せる~。月50ドル(5000円くらい)だと…なんも変わらんかな(笑) 

 人は月11万円が自動的に手に入る生活で、仕事のモチベーションを保ち続けていられるのか、怠け者になるのか。11万円は、それだけで生きていくには不十分ですが、仕事のない人が餓死することはなくなるし、低所得者層を文化的な生活へと押し上げることができます。はたして、それが、その人の人生を豊かにするのか、堕落させてしまうのかは、試してみないと分からないことです。

 また、制度としてベーシックインカムを成立させるには、一人ひとりに与えられる金額以上の生産性が、社会全体で得られなければなりません。短期的にみれば、貧困がなくなり、消費が増えること、長期的にみれば、非婚化・晩婚化・少子化が改善されることです。あるいは、そんなライフスタイルに縛られることなく生きる道を選ぶこともできるようになります。ばりばり働きたい人が、結婚はしないけれども、ハウスキーパーを雇ったりすることもできるでしょう。もちろん、11万円あれば、働かずに暮らしたいという人もいるはず。しかし、それが可能であれば、「お金にならないけれども、やりたいことがある」という人の暮らしを、最低限、支えることもできるのです。物価はだいぶ上がるでしょうけどね。

 お金があればな、なんて、誰もが夢みることですが…。結果をみるのが楽しみであり、こわくもある実験です。そもそも、この実験がよい結果をもたらしたとして、ベーシックインカムの有効性が確認されたとしても、実現させるには、一番最初の莫大な予算をどこからか拠出しなければならない(または、将来の収益を見込んで赤字が拡大する)という問題があります。何歳からが支給の対象となるのか、とかね。基本的には、全年齢に、無条件で一律に、という考え方のようですが、そうなると……1億2000万人×11万円×12ヶ月=うわあああああああああって感じです。日本で11万円は非現実的かな。5万円でもいいや。

 

ブリューゲル「バベルの塔」展に行ってきた

ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展公式ガイドブック (AERAムック)

 

 興奮するほど素晴らしかった…。

 

 現存するブリューゲルのバベルのうちの一つが来日しています。私は大阪の国立国際美術館で鑑賞してきました。上の画像からもみてのとおりのスケール感と、重厚な色合い。しかし、今回は、実物を目の当たりにできる幸運はもちろん、展示の構成も素晴らしい企画でした。順番にみていくだけで、バベルの塔に至る時代背景や影響を知ることができます。 

 

 ■時代背景

 ブリューゲルは16世紀のネーデルラント(オランダ)の画家です。当時の西洋絵画は宗教画として発展してきました。宗教画には、そこに描かれた人物や場面、テーマを示す「モチーフ」が描かれます。今回の展示作品でいうと、聖カタリナを象徴するものとして「剣」が描かれています。これは、彼女が斬首刑に処され、殉教したからです。ほかにもよく出てくるものとして「棕櫚(しゅろ)」は殉教者を、ふくろうは英知をあらわします。こうしたものは持物(じぶつ:アトリビュート attribute)とも呼ばれますが、これらによって描かれている人物を特定することができるのです。

 

■ヒエロムニス・ボス

 今回の美術展では、ブリューゲルのほかにもう一人、主役がいます。それがヒエロムニス・ボスです。彼は、15世紀後半から16世紀初頭のネーデルラントの画家であり、つまり、ブリューゲルよりちょっと前の人です。ボスの作風は、ブリューゲルを含め、16世紀のネーデルラントの画家に大きな影響を与えました。

  彼の作品は、聖書などをもとにした宗教画でありながら、妖怪のような奇想天外な生きものが跋扈する世界を描いた、強烈なものです。その世界観は当時の人々を魅了し、16世紀中頃には、ボスの画風を模倣した版画や絵画が人気を博しました。ボス自身の作品は25点しか残っていないのですが、これらの模倣された作品から、ボスが描いたモンスターたちを知ることができます。

 見どころ|【公式】 ブリューゲル「バベルの塔」展

 美術展の公式ホームページでは、かなり力を入れてボスや「バベルの塔」の見どころが説明されています。これを見るだけでも足を運んだ気分になれるかも。

 

ブリューゲルとボス

  ブリューゲルもまた、ボスの模倣作品を描いています。今回の展示会では、その代表作品である「大きな魚は小さな魚を食う」を見ることができます。弱肉強食的な意味をもつことわざで、そのフレーズのとおり、大きな魚が小さな魚を食べている絵です(下記リンク画像参照)。

 この絵の中に、ボスのモチーフとして、足の生えた魚や空を飛ぶ魚が描かれています。手前の舟では、父親が息子に「あれをごらん」と魚を指さし、世の摂理を教えているようです。左上の小屋の手前に入る足の生えた魚は、今回の展示会の公式キャラ「タラ夫」になっています*1

www.asahi.com

 

 

バベルの塔、雄大かつ詳細

 そして、展示会の最後にあらわれる本命、「バベルの塔」。実物をみて感じたのは、ポスターやポストカードの色の再現度が極めて高いということです。バベルの塔はよく、ジグソーパズルなどのいろんな商品にあしらわれていますが、同じ絵であっても赤や青の色合いが結構、違います。

 「バベルの塔」の赤色は、私はてっきり夕焼けか何か、あるいは、壊れる運命にあることを示唆するものだと思っていたのですが、あれは赤レンガのようです。塔の左端に赤いラインが縦に入っているのがわかると思います。あれは、赤レンガを下から上へ運ぶときに付いた色なのです。

 この一端からも分かるように、ブリューゲルは、人が巨大な塔を建てる姿を生き生きと想像しています。決して神話や聖書の話ではなく、非常にリアルな「建築」です。これは小さい画像ではよく分からないのですが、その他にも、物を上に運ぶための滑車や、馬、資材を運ぶ人びとなどが塔の通路に描かれています。右側の船も建築資材や食料を運んできているのでしょう。巨大な塔ですから、人々が塔の中で生活を営みながら築き上げているのです。

 こうした今にも動き出しそうな人々の姿は、農民画家として知られるブリューゲルの印象に通じるものがあります。彼の観察眼が、このスケールを生み出したのでしょう。

 

 ちなみに、「今にも動き出しそうな」と書きましたが、この展示会の最後にはある映像の紹介があって、そこでは「バベルの塔」が3D技術で再現され、なんと本当に動きます。これが非常に夢があって、いずれVRで「ブリューゲルバベルの塔ツアー」をしてほしいと期待するくらいでした。ブリューゲルバベルの塔の中身までは描いていませんが、今回の展示会では、大友克洋氏が描いた内部構造の様子「INSIDE BABEL」*2も展示されていたので、できないことはないはず(笑)

 

ピーター・ラビット展に行ってきた

     ピーターラビットのおはなし (ピーターラビットの絵本 1)

 

 グランフロント大阪で開催中のピーター・ラビット展に行ってきました。思ったよりも展示数が多くて充実しています。グッズも豊富でピーターに貢いでしまった…。開催情報は公式HPへ(ビアトリクス・ポター™生誕150周年 ピーターラビット™展)。このHPを見るだけでもかわいいです。

 

▼「ピーター・ラビットのおはなし」

 シリーズの絵本で、3冊1セットになっているものが3つ、つまり9冊ぐらい実家にあったと思うのですが、最初のピーターのお話が子どもの頃の私にはやけに怖くて、実はろくに読んだことがありません(畑の野菜を食べたピーターを、畑の持ち主のおっさんが追いかけるというストーリー。捕まったらお父さんのようにパイにされちゃうかもしれないので、かなりハラハラする)

  あれって、登場人物(動物)も結構多くて、それも小さい私にはハードルでした。だって、しょっぱなから「フロプシー」「モプシー」「カトンテール」「ピーター」という4匹の名前が出てくるんですから…。

 

▼ピーターのかわいさ

 あのかわいさって、妙にデフォルメされていない、リアルな質感の動物が、服を着て生活を営んでいるというところにあるんじゃないかなと思います。

 ピーターの絵本といえば、今まで彩色されたものしか見たことがなかったのですが、この展覧会では白黒の線画をたくさん見ることができました。線画のほうが際立つ、すごい画力です。

 もともとは作者であるビアトリクス・ポターが、知人の少年に手紙で描いた物語で、それをもとに私家版(自費出版)の絵本を出版しました。このときは線画のみです。のちに、これに彩色したものが刊行されました。

 公式サイトの「見どころ」のページ(見どころ | ビアトリクス・ポター™生誕150周年 ピーターラビット™展)では、線画と水彩画の画像を見ることができます。水彩画もきれいですが、線画では、少ない線で動物の質感を捉え、背景もしっかり描写されているのがわかります。めっちゃデッサンうまいんだろうなって感じです。

 

ビアトリクス・ポター

 今まで作家の名前を認識したこともなかったのですが、彼女自身の人生も興味深いものでした。なんといっても多才な女性ですね。作家としてだけでなく、関連商品を商標登録したり、農場を経営したり、羊のブリーダーとして評価されたり。かなり知的な、かつ挑戦を恐れない、優秀な実業家だったのではないかと思います。このあたりのことも展覧会では焦点をあてられています。